物語から想いを紡いだリメイク作品

-お客様からのメッセージ-

筆名: 千葉紫月 様

リメイク品確かに受け取りました。
思い出を素敵な形に残せて、とても嬉しく思います。

これからこの子が大きくなるにつれ、大変な事も
沢山増えていくかもしれません。

でもこのブックカバーを見るたびに、この子が産
まれてきてくれた時の初めの感動を思い出して、
きっと頑張っていけると思います。

この度は本当にありがとうございました。

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ひなた短編文学賞
佳作とアイデア賞のW受賞作品
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タイトル: 掌に我が子
筆名:  千葉紫月

駅を降りると、急な夕立に出くわす
バス停は大行列。小遣いをやりくりしている身と
しては、簡単にタクシーは乗れない。
「仕方ない、走るか」
カバンを傘にして家まで走る。

「ただいま」
「おかえり。随分濡れちゃったね。傘持っていかな
かったの?」
びしょ濡れになった姿を見て、妻の葵が呆れたよ
うに言った。
「雨降るなんて天気予報で言ってなかったからさ」
「だから、いつも折りたたみ傘持ちなさいって言っ
ているのに。直ぐに お風呂入る?」
「そうするよ。湊は?」
「今起きたところ。ついでにお風呂入れちゃってく
れない?」
「了解」
湊はこの春生まれた、初めての息子だ。
ベッドを覗くと夢中になってメリーで遊ぶ湊の姿
が見えた。
「ただいま、元気だったか?」
顔を近づけるとキャイキャイと楽しそうに笑う。
「もっと育休取れば良かったな」
産後二ヶ月は育休を取得した。仕事の関係、金銭
面など考慮すると、そのくらいが限界かなと思って
取得したが、今思えば無理してでも、もっと育休を
取れば良かったと後悔している。
「早くお風呂入らないと風邪引くわよ」
葵に言われ、急いでスーツを脱ぎ、湊の服も脱が
せる。
湊の服を脱がせると太腿に赤い跡が残っていた。
「もう六十センチの服じゃ小さいかもな」
「えー、こないだ買ったばかりなのになあ。しょう
がない、七十センチの服を出しとくからお風呂出た
ら、それ着せてあげて」
「小さくなった服はどうするの?」
「もったいないけど、処分するしかないね」
この空色のロンパースは自分が初めて湊に着せた
服だったので、少し残念だった。

「鞄も濡れていたから、干しといたよ」
お風呂から上がると広げた新聞紙の上に鞄が干さ
れていた。
「ありがとう。中身まで濡れていた?」
「そこまでじゃないけど、これはもうダメだね」
通勤の友であった文庫本は見るも無惨な姿になっ
ていた。                              
「明日からは折りたたみ傘持っていくよ」
「そうした方がいいね」

翌日は昨晩の雨が嘘のように快晴だった。
「行ってきます」
「ちょっと待って」
玄関口で葵に呼び止められる。
「これ持っていって」
葵の手には見覚えのある色のブックカバーが握られ
ていた。
「もしかして、湊の服か?」
「上手く出来ているでしょ?」
「器用なもんだなあ」
素直に感心してそう言った。
得意気な顔をした葵に送り出してもらい駅に向かう。
電車に乗り早速ブックカバーをつける。
本を手に取ると、まるで湊を抱いているような気
がして心がとても温かくなった。

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※実際ご着用のロンパースをブックカバーにリメイク

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 リメイクしたブックカバーとご一緒に。

     写真撮影: 千葉紫月 様

 

 

 

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